山梨県笛吹市の豊かな自然に囲まれた地で、90年以上にわたりブドウ栽培と醸造技術を受け継いでいる新巻葡萄酒様。4代目となる中村さんによって運営されるワイナリーは、地元の気候と土壌を生かしたワイン造りに専念しています。
自社栽培のブドウのみを用い、デラウェアやマスカットベーリーA、甲州といった品種から、フルーティーで香り高いワインを生み出しています。新巻葡萄酒では、自社栽培にこだわることでワインに独自性と地域の特色を反映させています。
今回は新巻葡萄酒株式会社代表の中村さんにお話を伺いました。
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一升瓶で楽しむ地域独自のワイン文化
(モキ)こんにちは!今日はよろしくお願いします!
(中村さん)よろしくお願いします。
(モキ)(ワインを見ながら)一升瓶のワインがあるのですね!?初めて見ました。
(中村さん)この地域は扇状地になっていてブドウ栽培に適した地形で、昔からワインを日本酒のように日常的に楽しむ文化がありました。そのため、一升瓶サイズのワインも生産されていました。昔からこの地域にあるワイナリーは一升瓶サイズをつくっているところが多いと思います。
昔はワインを湯呑みで飲む習慣もありました。ワインは今ではおしゃれな感じですけど昔はそんなに気取っていなかったので私はワインより葡萄酒という感覚に近いですね。
(モキ)なるほど。たしかに一升瓶だとワインというより日本酒や焼酎に近い感覚ですね。
(中村さん)僕らは一升瓶が普通だと思っていたのですが、県外の方は結構びっくりされますし、最近は一升瓶のワインを求めていらっしゃる方もいます。バーベキューなんかに持っていくとサプライズになるので、そういったかたちで買っていかれる方もいらっしゃいます。
100年後も続く自然に優しいワインづくりを目指して
(モキ)新巻葡萄酒さんのホームページには”この先100年に向けて持続可能な農業と醸造プロセスに取り組んでいる”というビジョンがありますがこれにはどんな想いがあったのでしょうか。
(中村さん)これから気候変動が進んでいく中で、それでも技術を見直しながら、環境に合わせて作っていくという意味で作っていくという覚悟を込めて100年先と言っています。その中には環境に合わせるだけだとやっぱり限界があるので、その環境守るという活動もその100年先に向けてやっていかなければという想いがあります。
背景には昨今の気候変動が及ぼすブドウ栽培への影響があります。大規模な台風が年に何度もあったり雨が長期間降ったり降らなかったりとブドウの栽培に苦労しています。そんな中で山梨県の4‰(パーミル)イニシアチブ※の取り組みを聞いて関心を持ちました。
※4‰(パーミル)イニシアチブ
世界の土壌表層の炭素量を年間4パーミル増加させることができれば、人間の経済活動などによって増加する大気中の二酸化炭素を実質ゼロにすることができるという考え方で、農業分野から脱炭素社会の実現を目指す取り組み。「パーミル(‰)」とは「パーセント(%)」の10分の1の単位で、4パーミルは1000分の4、パーセント(%)では0.4%に相当する。
引用:4パーミル・イニシアチブについて(山梨県)
ブドウは毎年大量の剪定枝を焼却処分するのですが、それを炭にして二酸化炭素を貯留できればその分温室効果ガスを削減できます。剪定枝から炭をつくれる製品ということでモキさんの無煙炭化器を紹介いただきました。
剪定枝を炭に!シンプルなアクションで環境に貢献
(モキ)無煙炭化器をご覧になった印象はいかがでしたか。
(中村さん)思っていたよりだいぶシンプルだなと思いました。お値段が結構する割に製品は金属の輪っかなので(笑)。
実際に使ってみると炭ってこれでつくれるんだなと思ったのを覚えています。
(モキ)無煙炭化器をお使いになる前は剪定枝をどのように処分されていたのでしょうか。
(中村さん)それまでは剪定枝は基本的に焼却処分をしていました。そのまま燃やすので灰になります。灰はpHが高すぎて畑に還元できないので灰を畑に撒いたりもしていませんでした。その点、無煙炭化器は燃やすと炭になるので畑に全部還元しています。
(モキ)炭を畑に撒くと、やっぱり農作物にも影響が出ますか。
(中村さん)すぐには結果は見えないんですけども、炭というのはすごい多孔質で、そこに微生物が住み着いたり、保肥力の増強にもつながります。また、有機物の供給にもなります。昨今、堆肥なんかは結構な値段がするので、それを一部補助するという意味合いでも投入しています。
(モキ)なるほど。剪定枝の処分はすべて炭化器で行っているのでしょうか。
(中村さん)今は全体の3割程度を炭化器で処分しています。10アールあたり剪定枝は900kgくらい出るのですが、何分、私一人で処分を行っているのですべての剪定枝を炭化器で処分するには時間と労力が足りていません。今後5年くらいを目処に処分量を5割に引き上げたいと考えています。
(モキ)笛吹地域は他にもブドウ農家さんがたくさんいらっしゃると思いますが、新巻葡萄酒さんのように炭化器を使って剪定枝を処分されている農家さんはいらっしゃいますか。
(中村さん)JAで無煙炭化器をレンタルしているそうなので使っている方はいると思います。無煙炭化器は当ワイナリーのホームページを見てなのか、毎年コンスタントに問い合わせがあって見学される方がいらっしゃいます。そのときは無煙炭化器を実際に使っている様子をご覧いただくのですが、「こんな簡単に炭がつくれるんだね」という感想が多いです。
(モキ)無煙炭化器のことを発信いただいているのですね。ありがとうございます!
(中村さん)温室効果ガス削減の取り組みをやりますと謳っているので「ちゃんとやってますよ」と示すためにInstagramやホームページで発信を行っています(笑)。
未来のために今を変える。環境への想いをかたちに
(中村さん)最近は本当に異常気象が多いなと感じています。雹が何度も降って雹害が出たり、雨が1,2週間降り続いてブドウの病気が蔓延した記憶もあります。あとは夏ですね。40℃近くの酷暑が続いてブドウの着色が悪くなる現象も起きています。
私が小学生のときには既に授業で環境問題を扱っていて、地球を守ることをしなきゃと思っていたのですが、大人になったときにそれができているかとふと思うことがありました。今は会社の代表という立場となり、昔の自分に誇れるような活動をしていきたいと考えています。未来のために今やらなければいけないと思うので、小さい企業だからという言い訳はやめて、環境のためにできることはなんでもやっていこうと思います。
新巻葡萄酒株式会社
〒405-0065 山梨県笛吹市一宮町新巻500
https://aramakiwinery.jp/
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無煙炭化器 M150
¥169,400(税込)